DISTRICT 37

なにか

映画「ブラックホークダウン」を見た

この間NHKBSでやってたので久しぶりに見た。公開からもう10年経ってるのか。

ブラックホーク・ダウン [Blu-ray]

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ドラマの無い映画

この映画のコピーはこうあった。
「あなたはこの戦争に言葉を失う。しかし、知るべき時が来た。」
とはいえ鑑賞している間「痛てぇ」とか「まだいるのかよ」とか呟きながら見ていたが、映画を見終わった時にはやはり言葉を失っていた。この映画にはドラマはなくただひたすら戦闘を見せられ続ける。映画でよくあるような敵をやっつけたら勝ちとか、トラウマを乗り越えて成長する主人公とか、そういったものが一切ない。そもそも一体誰が主人公なんだろうとさえ思う。見終わった後も出てきた人物が誰が誰でというのがさっぱりわからない。いや、きっと覚えなくてもいいのだろう。この映画の味わい方は戦闘の記録を見るだけだ。意味もなく。 ただ言えるのはアメリカ軍を正義として描いていないし、ソマリア民兵を悪として描いていない。これが正解だというのを答えとして提示してもいない。未来の世界の猫型ロボットもこう言っている。
「どっちも自分が正しいと思っているよ。戦争なんてそんなもんだよ。」
それぞれ見た人の中で感じたことが正解だと思う。

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正直この映画は面白いかと言われたら、面白いとは答えない。しかし見ているうちに途中でやめることができない。目が離せなくなる、いや、ここでやめてはいけないのではないかと思えてくる。見るに値するか聞かれたらぜひ見るべきと答える。僕を含めた戦争を経験していない世代の日本人は、これを見てどうする事がいいのかを考えるべきだと思う。折しも改憲とか集団的自衛権とかやってる世の中なのだから。

アメリカ兵士が経験した戦争

イラクの帰還兵と知り合いになって話をしたことがある。彼は空軍に所属していたがいわゆる航空機による作戦に携わるようなパイロットではなく、地上部隊としてイラクに行き、そして無事に(?)帰ってきた。彼はいつも「イラクの日々はマジで糞だった。思い出したくもない。」と言っていた。ソマリアのような大規模な肉弾戦は経験しなかったものの、イラクでも同じように戦闘があり、それを見てきた人の言葉は重くそれ以上踏み込んで話を聞く覚悟は僕にはなかった。 ソマリアにおける地上部隊による作戦が失敗したことを受けて、モガディシュの戦闘以降、軍事作戦には航空機による空爆が中心となって組み立てられるようになった。誰もがこんな戦闘はいやなのだ。そういう作戦を採ったにも関わらず彼の感想は「糞だった」というものだったのだ。好き好んで戦闘をやってるやつなんていない。そう、アメリカ軍の兵士でさえもだ。かといって空爆が正しい解答なのかといえば疑問は残る。

ブラックホークダウンはヘリコプターの話です

オスプレイ横田基地に配備するとか、墜落事故で住民がやばいとかそういう時世でこの映画をやるなんて、NHKサイドの何らかの意図を感じるというのはきっと陰謀論だ。 ブラックホークダウンのタイトルは米軍のヘリコプター「UH-60ブラックホーク」がソマリア民兵の放つ携帯型ロケット砲「PRG-7」によって墜落させられた時のセリフ「We got a Blackhawk down(ブラックホーク墜落します)」という墜落時の交信からとられている。そりゃロケット砲を撃ち込まれればヘリは落ちる。オスプレイだって落ちる。しかしながら、どちらかというとオスプレイ容認派だが「We got an Osprey going down」とならないことを祈る。