DISTRICT 37

なにか

歌舞伎が見たくなった。「ビジネスマンへの歌舞伎案内」

マイクロソフト日本の代表を務め、現HONZ代表の成毛眞さんによる歌舞伎の案内書。歌舞伎が見たくなったというのがなによりも率直な感想。

目次

第1章 忙しい現代人には歌舞伎が必要である
第2章 知らないと恥ずかしい歌舞伎の常識
第3章 教養として押さえておきたい演目一二
第4章 歌舞伎見物をスマートに楽しむ
第5章 ビジネスに歌舞伎を役立てる

歌舞伎とは長い目で見る芸能

著者曰く、高齢になってから趣味にするよりも、今から趣味にしておくと高齢になった時でも楽しめるという事だった。通い始めはわからなくても内容がだんだん分かるようになってくる。幼いころにデビューした役者がいずれ成長して大名跡を襲名したりする。それでいて公演内容はいつもと変わらない(演出に関してではなく)。著者は長いスパンで趣味にするにはこれほどいいものはなく、高齢者の趣味として位置付けるにはもったいないとおすすめする。
歌舞伎を見たことのある同世代って周りでは結構少ない。最近FBで「歌舞伎見に行ってきましたー」というエントリを見かけるたびにフツフツと行ってみたいという欲が湧き上がっていた。だが、なんか敷居が高いような気がして行く機会がこれまでなかった。

チケットに関する敷居

まず料金が気になる。伝統芸能だし歌舞伎ってお高いんでしょう?とまずは思ってしまう。そりゃ高いものもあるにはあるが、4000円の席からあるというし、もっと言えば幕見といって1500円程度からというものもあるという。

www.kabuki-bito.jp

歌舞伎の公式サイトにチケット情報が載っているが、幕見に関してはあまり出ていない。ツウの技なのだろうか?幕見に関してはいつもあるわけではないというので期待しないほうがいいのかもしれない。でもやっぱりデビュー戦位はいい席で見たいと思います。

内容に関する敷居

これが越えにくい敷居だと思われるが、内容の理解ができない(というか何言ってるかわからない)という心配については英語のラップミュージックのように「何言ってるかわからなくてもいい」と喝破されている。確かにそうかもしれない。ブラックミュージックなんかは「おっ、これいいね」と思っても、歌詞を見ると何とも下衆な事を言ってたりすることがある。さらに演目によっては「ナンセンス」物というのがあるらしい。「暫」という演目がそれで、悪いやつが悪さをしている際に、さっそうと登場したヒーローにやっつけられて終わりというもの。

暫 - Wikipedia

調べれば調べるほどこの演目は様式美を楽しめとある。なるほど、これはとっつきやすそうだ。

専門用語に関する敷居

隈取の型とか、舞台に上がる人の役割とか、知っておいたほうが面白くなる専門用語を本書では紹介している。読んで初めて知ったのが、「大向う」と呼ばれる人たちの存在だ。歌舞伎を見に行ったら「いよっ成田屋!まってました!」とか叫んでやろうかと思っていたが、これにはどうやら専門職がいるらしい。彼らはよく訓練された人たちなので、素人が知ったかぶってやると危険とのこと。危ない危ない。

大向う - Wikipedia

まぁあとはN代目市川某とか、i代目中村某とか名前の大きさや、それを襲名する役者に関する敷居も初心者にとって越えがたい敷居だが、プロ野球の選手とか海外サッカーの選手とかと一緒で、気に入った人を追いかけて慣れるしかないんでしょうね、こればっかりは。

勧進帳と暫が見たい

とまぁどれもなんとか越えられそうな敷居だという事がわかったので、「勧進帳」と「暫」、もしくは三大演目をやる日を狙って近いうちに見に行きたいと思います。
確かに歌舞伎が見たくなる本だったのだが、「ビジネスマンへの~」というタイトルについてはハテナだった。なんか「海外のお客様にウケはいいし、日本人の教養として歌舞伎ぐらい知ってないとビジネスマンとして云々」とマイクロソフト出身ならではのTipsでも書いてあるのかなと期待してしまったが、そういうのは申し訳程度だった。というよりも本書の中で、「本当に役立てたいならこんな本よんでないでほかの本を読めよ」と書いてある。ならそんなタイトルは、、、と突っ込まざるを得ない。期待はいい意味で裏切られたが、歌舞伎の魅力を伝える一冊なのには間違いない。