どっちの物語がいい?ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日
ノンフィクションを知りたいか、それともフィクションを観たいのか。
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- 発売日: 2013/11/22
- メディア: DVD
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映像美を楽しむ
パイ君は泳ぎに関してはスパルタ教育の甲斐もあって問題無いというところから話は始まる。
動物園を経営するパイ君の父が突然カナダに移住すると決めて、所持している動物を詰めて一家で船に乗り込む。
インドからカナダに向かう船旅の途中で嵐に会い、救命ボートにパイ君とトラとシマウマとオランウータンが命からがら乗り込み、漂流生活が始まる。
その漂流生活の間に巻き起こる現象がとにかく綺麗で美しい。完全な凪となった海や、一面の海ほたる、ミーアキャットの潜む植物の浮島。そのどれもが嘘みたいに美しい。
そしてなんといってもトラだろう。CGなんだろうけど、まさにそこにいるような存在感。どうせあれだろ、映画だしうまいこと心が通じちゃって連携プレーとかしちゃうんだろ?とか思ってたらそんな事はなかった。ヤツは最後までトラだった。トラはトラであるが故美しかった。
ラストの問いかけ
漂流から無事に生還したパイ君が、小説家にこの物語を聞かせるという形で話は進む。にわかには信じられないよと小説家が言うと、事故調査に来た日本人も同じ事言ってたよと大人になったパイ君。そこでこんな別の物語を用意したんだと改めて語り出した。
その話が終わると、パイ君は小説家に語りかける。
「どっちの物語がいい?」
僕はこの一言で打ちのめされた。だから徹底的に美しい映像だったんだと。
嘘みたいな綺麗な話と、本当にあった泥臭い話どっちが聞きたい?と聞かれたらどっちと答えるだろうか。後者と答えるのならなぜ映画なんていうフィクションの塊を見ているのだろうか。前者と答えるのならば、なぜパイ君の話を嘘くせーと疑ったのか。
それでも僕はきっとフィクションを求めて映画を見続けるのだろうと思う。なんだか物語の価値観を揺さぶられる映画体験だった。